ローソンのカット野菜、急成長の秘密
一方で、カット野菜には、単品では生鮮食品売り場に並べない規格外のいわゆる「“クズ野菜”を使っている」「値段の割に量が少なく“割高”」というネガティブなイメージもあり、爆発的に売れている印象はあまりなかった。
そのカット野菜が、コンビニ大手のローソンでヒット商品となっている。ローソンの独自企画であるプライベートブランド(PB)「ローソンセレクト」のカット野菜が、2012年度(12年3月~13年2月)の販売数量を、前年度からなんと約4倍に伸ばしたのだ。
■ ネガティブなイメージを払拭
急成長の裏側には何があるのか。謎を解くカギは、カット野菜が持っているネガティブなイメージを払拭したことにある。
まずは、“規格外のクズ野菜”だ。強力なパートナーとの連携構築がキモとなった。「洗わずに食べられるなら、野菜そのものにこだわろう」(生鮮コンビニ推進部管掌の前田淳・執行役員)という方針に沿って、関東甲信越地区でパートナーに選んだのが群馬県の富士食品工業である。
富士食品工業は全国の契約農場を通じ、土作りに徹底的にこだわる「中嶋農法」という農法を用いた野菜を調達する。中嶋常允・エーザイ生化研名誉会長が提唱する中嶋農法では、土壌中に含まれる11種類のミネラルを分析。欠乏している要素があれば補給し、常に土壌を最適な状態に維持するのが特徴だ。
富士食品工業が農業の現場にまで踏み込む背景には、1965年の創業のきっかけになった「もやし」の生産方法がある。もやしは農薬などを使用せず、日光水系の地下水をたっぷり使って生育する。もともと、86年に大手スーパーの要請を受けてカット野菜市場に参入したが、当時は別の食品メーカーに製造を委託していた。
■ 化学肥料や農薬は「意に反する」
ところが、「化学肥料や農薬、除草剤を使って生産された野菜は意に反する」(富士食品工業の髙橋直二社長)と、カット野菜の原料となる野菜に農薬などが使われていることに疑問を抱き、みずからが納得のいく商品の提供に切り替えていった。
ローソンは、こうした富士食品工業のこだわりや取り組みを評価。約5年前から取引をしているが、カット野菜の分野で本格攻勢に出たのは12年4月だ。リニューアルした「ローソンセレクト」のカット野菜でも富士食品工業と組み、中嶋農法で栽培された野菜を使用しているカット野菜のパッケージに「中嶋農法」の名称を記載。規格外の野菜を使っているというイメージを払拭した。
もう一つは、“割高”感の払拭である。
「ローソンセレクト」の「キャベツ千切り」は、キャベツL玉が可食(芯などを除いた食べられる)部分の3分の1~4分の1が入って1袋98円。富士食品工業と年間を通じて契約を結び、一定価格で調達している。
青果の価格は原則として需要と供給のバランスで決まるため、豊作で安いときにはキャベツ1玉が200円程度で購入できる。その場合、カット野菜は確かに割高だ。ところが、近年は厳冬などを背景に葉物野菜の価格がしばしば高騰。キャベツ1玉が400円近くになることもある。安定したカット野菜の価格が、ここで奏功してくるのである。
■ 食べきりサイズをむしろ評価する購買層も
「もったいない」意識の強い高齢者や主婦、単身世帯などには、むしろ「食べきりサイズ」で、かつ単価が100円程度に抑えられていることが支持される場合もある。「カット野菜のような簡便的な野菜は、コンビニで置くからこそ(スーパーなどと)差別化できる」と、均一価格が特徴の「ローソンストア100」を展開する九九プラスの福田正太郎・商品物流本部生鮮部部長は語る。というのも、簡易調味料や弁当と同時に購入される頻度が高く、客単価の引き上げに寄与する商品だからだ。
生鮮食品は、加工食品などと比べて利益率が低く、品質の劣化も早いため、取り扱いをためらう、フランチャイズチェーン(FC)加盟店もあったが、「加盟店オーナーも納得して店に(生鮮食品を)並べるようになった」(九九プラスの福田氏)という。
ローソンは12年10月、「生鮮コンビニ宣言」を打ち出し、生鮮食品の品ぞろえを拡大することで、60歳以上の高齢者や働く女性の取り込みに動き出した。先行して商品力を大幅に高めたカット野菜は、牽引車となりそうだ。
商品が持っている弱点にこそ、ヒットのヒントがある。ローソンのカット野菜からは、そんなセオリーが感じ取れる。
楽でいいけど、自分的には高級品だわw
そらもうスーパーの投売り野菜よ。
- 関連記事
-
- 「年収1000万円超え」の仕事とは
- ローソンのカット野菜、急成長の秘密
- 20代の5人に1人は「トイレで食事をしたことがある」

